2026(R08).11. 4 瀬戸内海の長期観測データから水温上昇、栄養塩濃度低下が明らかに―水産資源変動要因の解明と今後の沿岸環境管理に重要な基礎情報―
令和8年11月4日
国立研究開発法人 水産研究・教育機構
地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所
兵庫県立農林水産技術総合センター
和歌山県水産試験場
岡山県農林水産総合センター
広島県立総合技術研究所
山口県水産研究センター
徳島県農林水産総合技術支援センター
香川県水産試験場
愛媛県農林水産研究所
福岡県水産海洋技術センター
大分県農林水産研究指導センター
瀬戸内海の長期観測データから水温上昇、栄養塩濃度低下が明らかに
―水産資源変動要因の解明と今後の沿岸環境管理に重要な基礎情報―
ポイント
- 瀬戸内海で1973年から2025年まで53年間にわたり毎月実施された水質観測のデータを解析しました。
- 瀬戸内海全域で海水温が大きく上昇し、特に1990年代後半に顕著な変化が生じていました。
- 海水中の栄養塩である溶存態無機窒素(DIN)濃度は東部海域を中心に大幅に低下していました。
- 本成果は水産資源変動の理解や今後の沿岸海域の環境管理に活用されることが期待されます。
概要
国立研究開発法人水産研究・教育機構と瀬戸内海に面する11府県の水産試験研究機関は、1973年から2025年まで53年間にわたり実施された「瀬戸内海ブロック浅海定線調査」の水質データを解析しました。これは国内有数の長期かつ広域的な海洋環境観測データセットです。
解析の結果、瀬戸内海全域平均で表層水温は50年間あたり1.25℃、底層水温は1.03℃上昇しており、1996~1997年頃を境に水温が高い状態へ移行したことが確認されました。 一方で海水中の栄養塩である溶存態無機窒素(DIN)濃度は東部海域を中心に大幅に低下し、瀬戸内海の水質が過去半世紀の間に大きく変化してきたことが明らかになりました。
このような水質の長期変化は、瀬戸内海の水産資源の増減に直接影響するとともに、餌生物や捕食生物なども含めた生態系全体に影響を及ぼしていると考えられます。そのため、水産資源変動要因の解明や科学的根拠に基づく資源管理、沿岸海域の環境管理のための基礎情報として活用していくとともに、海洋環境の変化をいち早く察知するために今後も観測を続けていきます。
この研究成果は、2026年10月24日に、
Journal of Oceanography(DOI: 10.1007/s10872-026-00813-y, URL: https://doi.org/10.1007/s10872-026-00813-y)
にオンライン掲載されました。
論文名:Long-term changes in water quality in the Seto Inland Sea, Japan: 53-year observations (1973-2025)
著者:鬼塚 剛(水産研究・教育機構水産技術研究所)・秋山 諭(大阪府立環境農林水産総合研究所水産研究部)・肥後翔太(兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センター)・御所豊穂(和歌山県水産試験場)・乾 元気(岡山県農林水産総合センター水産研究所)・加川真行(広島県立総合技術研究所水産海洋技術センター)・渡邉俊輝・茅野昌大(山口県水産研究センター内海研究部)・石川陽子(徳島県農林水産総合技術支援センター水産研究課)・吉田 誠(香川県水産試験場)・喜安宏能・槇 浩樹(愛媛県農林水産研究所水産研究センター栽培資源研究所)・惠﨑 摂(福岡県水産海洋技術センター豊前海研究所)・岡田 理・毛利文香(大分県農林水産研究指導センター水産研究部)
※著者の所属は研究実施当時のものです。
本研究の一部は、水産資源調査・評価推進委託事業(水産庁)で得られたデータを利用して実施されました。
資料(PDF:777KB)