国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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長期産卵調査に基づく黒潮域のイワシ類産卵場変動の再検討

論文公開日:2026年4月16日

 

研究実施者:水産資源研究所 浮魚資源部 木下順二ほか

1978~2020年の長期産卵調査データを用いて、日本の太平洋側におけるマイワシとカタクチイワシの産卵場の変動を解析しました。その結果、2010年代にマイワシ単独の産卵場が拡大し、両種の産卵場の分布に変化が生じていたことが分かりました。

 日本の食卓に身近なイワシ類であるマイワシとカタクチイワシは、太平洋側の海では豊漁と不漁を数十年規模で交互に繰り返すことが知られています。このように、たくさん獲れる魚の主役が入れ替わる現象は「魚種交替」と呼ばれ、世界中の海で報告されています。しかし、なぜ一方が増えるともう一方が減るのか、その仕組みは十分に解明されていません。

 これまでの研究では、マイワシとカタクチイワシの産卵量や産卵場の分布が季節や資源量の変化に応じて移り変わることが明らかにされてきました。しかし、海洋環境や両種の資源量が大きく変化する中で、2000年代中盤以降の産卵量や産卵場分布の変化は明らかではありませんでした。

 そこで私たちは、日本の太平洋側で1978年から続けられてきた産卵調査に再注目しました。産卵場は魚の一生のスタート地点ともいえる重要な場所です。本研究では、40年以上にわたるデータを用いて、マイワシとカタクチイワシの産卵場の変化を、特に2000年代中盤以降に注目して調べました。

 その結果、マイワシの資源量が回復しはじめた2010年代に、カタクチイワシと重ならないマイワシの産卵場が拡大していました。特に、黒潮の下流域(潮岬~房総半島にかけての海域)における表面水温13~20℃の海域でその傾向が見られました。2000年代にはこの海域の多くがカタクチイワシ単独の産卵場だったことから、海洋環境の変化に伴ってカタクチイワシの産卵場が縮小し、それに続いてマイワシの産卵場が拡大したと考えられます。

 海洋環境は気温や海流などの影響で変化し続けており、変化の現れ方は場所によって異なります。こうした環境の変化は、餌の種類や量、魚の成長や成熟、産卵の時期や場所などに影響を及ぼし、その結果として魚の生き残りや資源量に変化をもたらすと考えられます。今回の成果は、魚種交替の背景にある仕組みを理解する上での新たな手がかりとなることが期待されます。

本調査は水産庁委託「水産資源調査・評価推進委託事業」およびJSPS科学研究費助成事業(20K20455、21H04737)によって実施されました。なお、本解析データには水産庁が漁業調査船開洋丸で実施した調査により得られたデータが含まれます(2001年5~6月および2002年1月)。

本研究成果は、国際学術誌「Marine Ecology Progress Series」に短報(Note)として2026年4月16日付けでオンライン公開されました。本論文はオープンアクセスのため、どなたでも無料でご覧いただけます。
表題:Revisiting the spawning overlap of sardines and anchovies in the Kuroshio Current system from 1978 to 2020
著者:木下順二*1、渡井幹雄*1、髙須賀明典*2、安田十也*1
*1:水産資源研究所
*2:東京大学大学院
URL:https://doi.org/10.3354/meps15106