国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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水産技術研究所長挨拶

 世界では、1人当たりの食用魚介類の消費量が過去半世紀で約2倍に増加し、その需要の拡大に伴い、特に養殖による生産量は大幅に増えています。世界的な需要拡大の一方で我が国の養殖業はその成長を停滞させていますが、我が国魚類養殖生産物は高品質であることから国際的な市場における潜在的ニーズは大きいと考えられ、国は養殖業の安定的成長発展に資する政策に取り組んでいます。一方で養殖生産の場である沿岸域は、昨今問題となっている気候変動、特に海水温の上昇により大きな影響を受けています。魚類養殖業にとっては大きな足枷となる赤潮発生の長期化や発生地域の拡大なども見られています。

 

 このような背景のもと、水産技術研究所は、人工種苗生産、育種、餌料開発、疾病対策等、養殖に関連する様々な分野を担当する「養殖部門」と漁港・漁場整備など漁業活動全般、沿岸漁場環境評価・管理、水産物の安全性評価等を担当する「環境・応用部門」の2部門体制で研究を推進してきました。これまでの主要な成果として、養殖部門においては、シラスウナギの大量生産技術に関連する技術、クロマグロの早期種苗生産技術の確立、ハタ類やホシガレイといった高付加価値魚種の新たな飼育手法の開発などを行い、これらの魚種の養殖産業化に向けて大きく貢献してきました。また、アコヤガイ軟体部萎縮症の病原体の特定と迅速な検出法を開発することにより、真珠養殖業の壊滅リスクの低減にも貢献しました。また、環境・応用部門においては、水中ドローンを用いた魚礁効果の定量評価、AIを用いたサケ回帰親魚の年齢予測システムの構築、世界に先駆けた水素燃料電池養殖作業船の完工及び実証試験の成功など、当該分野研究へ先端技術を導入することにより、次世代の水産業モデルを提示しました。この他、海草・海藻藻場のCO2貯留量算定ガイドブックの公開、気候変動に適応するワカメ高温耐性株の品種登録申請など環境変化に対応する研究を進めたほか、2021年秋季に北海道で甚大な被害をもたらした赤潮の原因種特定と予察技術の確立やマイクロプラスチックの海産生物に対する影響評価などにも取り組んできました。さらに、生鮮魚介類の鮮度評価法の国際標準化を推し進め、国産水産物の高鮮度をブランド戦略とする輸出の拡大に道筋をつけました。なお、昨年度大きな問題となったカキの大量へい死については両部門が共同でその原因究明や対策に取り組んでいます。

 

持田所長近影

 

令和8年4月より第6期中長期目標計画期間が始まりました。水産技術研究所は、漁業、養殖業を取り巻く環境変化に対応するため、養殖部門において研究部の再編、環境・応用部門においては環境・基盤部門へ名称を変更するとともに、生物の行動特性や沿岸域の基礎生産などに専門的に取り組む部署を新設するなど一部組織改編を行いました。当研究所は、漁業、養殖業を支える様々な生産技術の研究開発ならびに漁場環境の把握と理解を通じて水産物の安定供給と水産業の持続可能な発展に貢献することを目指し、引き続き研究を推進していきます。

水産技術研究所    所長 持田 和彦